Win-Winだったか自他共に勝利することを考える、そんな概念があったが、真実は自他がない。本当にない以上まどろっこしいこともない。勝利も敗北もない。愛と歓喜と自由は、圧倒的で、光のオーケストラがこれ以上ない満足感に満ちてスーパーダイナミックに躍動を奏でている。人間には近すぎてそのオーケストラが見えないことが問題かというと、それすら問題にならない。人間体験は一時的だからだ。しかも意識的に終了できるというタネがある。今その終了に多くの人間が集中している。いい加減この人間としての視野の狭さと暗さにはウンザリだ、ということだろう。本当は人間とは暗くない。暗いどころか、人間としての体験は超明るい事実に気づいた時、神々は人間を苦しめるために世界を創造したわけではないことにやっと心の底から納得する。至上最高の贈り物は人間として生きる一人一人のために完璧に用意されている。それは事実だ。だから最高のびっくり箱としての世界は機能している。神は常に人間の帰還を待ち望んでいる。


人として厄介に感じるのはその帰還方法が、今ありのままの自分も兄弟姉妹も心から愛していることに気づく、というパラドックスに満ちていることだ。足元すぎて、忘れてしまうのだ。肉体の分離が目について忘れてしまう。分離独立を信じるから、それが自分の鏡だと言われても到底信じられない。確かによくできている。この道を考え出したのは、きっと神様だろう。幾つもの生を繰り返しながら人は愛を体験していく。愛とはすべてのあり方を愛していることであり、人のあり方の本質を透過して愛していることだ。それは二つの動作ではなく、ひとつの動作でもない。それはただひとつであり、存在そのものだ。ただありのまますべてのあり方を愛している本当のわたしに気づくまで、愛せないという錯覚を取り除くことだ。あり方そのものが愛なのだ。だからこその自由。だからこその祝福。全員の今が最高の祝福と最高の自由につつまれている。



自身の傷に対して自分で愛を与えるという責任をとらないうちは、攻撃-防御、罪悪-非難という悪循環から抜け出ることはできません。怒り、傷つけられたという思い、裏切られた感じ、それらはあたかも正当なように見えますが、おたがいのいさかいの火に油を注ぐだけでなく、自分は愛されないし、愛する能力もない、という無意識の信念をたえず強めていきます。


この世界のいまわしい心理戦争からのがれるには、投影というゲームをやめることです。このゲームは自分の無意識の中の死への衝動を、それは悪いというせまい道徳倫理で、自分の目からもおおい隠してしまいます。皮肉に聞こえるかもしれませんが、自分は正しくて悪いのは兄弟姉妹なのだと主張しているその瞬間に、あなたは自分自身の罪悪感と劣等感を拡大しているのです。


非難の悪循環から抜け出るには、非難をやめるしかありません。ただし、覚悟してください。苦しみの円環から抜け出ようとすると、世間からはよく言われないでしょう。まず最初に攻撃の矢面に立たされるのは、この世界の投影ゲームに参加しない人たちです。あなたがたがわたしの生涯から教訓を受けとるとしたら、まずはそのことです。


自分自身の恐怖心をだれかに投影せず、自分のものとして自覚する人は、この世界のゲームをおびやかすのです。自分自身の殺人衝動を認め、その根を自分の意識の中に探そうとする人は、社会をとりまとめている道徳倫理をおびやかします。



質問者 混乱の構造は理解できますが、出口が見いだせません。


マハラジ  構造を調べること自体が道を示すのだ。つまるところ、あなたの混乱はあなたのマインドのなかにだけ存在している。そのマインドはけっして混乱に抵抗せず、それを理解しようともしてこなかった。マインドが抵抗したのは苦しみに対してだけだった。


質問者 それでは、私は混乱しつづけるしかないのですか?


マハラジ  油断なく在りなさい。問いかけ、観察し、調べ、混乱があなたや他人に何をし、どう作用するのか、混乱について何ができるのかをすべて学びなさい。混乱について明らかにすることで、あなたはそれを一掃する。


質問者 自分の内側を見つめるとき、私のもっとも強い欲望は己の記念碑、自分を永続させる何かをつくり出したいのだということが見てとれます。私が家や、妻や、子どもを思うときでさえ、それは永続する確固たる自己の証明となるからです。


マハラジ  では、記念碑をつくるがいい。どうするつもりかね?


質問者 それが永遠のものであるかぎり、何を建てるかは問題ではないのです。


マハラジ  あなた自身、何ひとつ永遠のものはないと知るだろう。すべては衰退し、朽ち果て、崩壊する。記念碑を建てる土台そのものが崩れ去っていくのだ。永続するような何を築くことができるというのだろう?


質問者 知的に、言葉の上では、すべてがはかないものだと気づいています。しかしそれでも、私のハートは永遠なるものを求めています。何か永続するものをつくりたいのです。


マハラジ  それでは永続する何かをつくるがいい。そのようなものを何かもっているかね?あなたの身体もマインドも長続きはしない。どこかほかを探すべきだ。


質問者 永遠なるものを求めてきましたが、どこにも見いだすことはできませんでした。


マハラジ  あなた自身が永遠なのではないだろうか?


質問者 私は生まれました。そして死んでいくでしょう。


マハラジ  あなたが生まれる以前、あなたが存在していなかったと言えるだろうか?そして死ぬときになって、「私はもはや存在しない」と言えるというのだろうか?あなた自身の体験からも、あなたが存在していないということは不可能だ。ただ、「私は在る」と言えるだけだ。他者もまた、「あなたは存在しない」と言うことはできない。


質問者 眠りのなかでは、「私は在る」という感覚はありませんでした。


マハラジ  そんな決めつけたような言葉を吐く前に、目覚めの状態を一度注意深く調べてみるがいい。目覚めの状態は、マインドが空白になった瞬間でいっぱいだとすぐに気づくだろう。完全に目覚めているときでさえ、あなたが覚えていることがいかにわずかかということに注意を払いなさい。眠りの間、あなたに意識がなかったとは言えないはずだ。ただ覚えていないだけなのだ。記憶の隙間が必ずしも意識の隙間であるとはかぎらない。


質問者 深い眠りの状態を記憶することはできるのでしょうか?


マハラジ  もちろん!目覚めている間の不注意なときを取り除くことが、眠りと呼ばれる長い放心状態の感覚を徐々に除去するだろう。あなたは自分が眠っていることに気づくようになるだろう。


質問者 しかし、永久なるもの、存在の永続性の問題はまだ解かれていません。


マハラジ  永久性とは時間の運動から生まれた、ただの概念にすぎない。時間もまた記憶に依存する。永久なるものと言うことで、あなたは無限なる時間を通して、変わることのない確かな記憶を表している。あなたはマインドを永遠のものにしたい。だが、それは不可能だ。


質問者 では、永遠とは何なのでしょうか?


マハラジ  それは時とともに変化しないものだ。一時的な、はかないものを不滅にすることはできない。不変のものだけが永遠なのだ。


質問者 あなたのおっしゃることの意味は概してなじみ深いものです。私はこれ以上の知識は欲しくありません。ただ平和が欲しいのです。


マハラジ  求めさえすれば、欲するすべての平和は得られる。


質問者 私は求めています。


マハラジ  ひたむきに求めなければならない。そして統合された生を生きなさい。


質問者 どうすればよいのでしょうか?


マハラジ  あなたのマインドを落ち着かなくさせる、すべてのものからあなたを引き離しなさい。平和を乱す、すべてのものを放棄しなさい。もし平和が欲しいのなら、それを受けるに値する者となりなさい。


質問者 もちろん、誰もが平和を受けるに値します。


マハラジ  それを妨げない者だけが受けるに値するのだ。


質問者 いったい、どのようにして私は平和を妨げているというのでしょうか?


マハラジ  欲望や恐怖の奴隷となることによってだ。


質問者 たとえそれらが正当と見なされたときでもでしょうか?


マハラジ  無知や不注意から生じた感情的な反応はけっして正当化されない。清らかなマインドと澄んだハートを探し求めなさい。あなたに必要なのは、静かに油断なく自己の本性を探求することだけだ。これが平和へのただひとつの道だ。


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