
たしかな”問い”がないから力の結集が無駄になる
”問い”さえ正しければ答えは出ます。”問い”から答えを出すための優秀な人間や環境は比較的溢れています。それに対して足りないのが、正しい”問い”です。合力(ごうりき)の核は”問い”だと思います。n2259
いまどこ? 何も足さず何も引かない
だれ? という質問と同義です。人間だという答えは想定にすぎません。そういうものを取っ払ってしまう最初の場所は、受け身で、純粋に、いまここに立つこの場所のことです。
赤、という色を観測するのは
非─赤、という場所からしかできません。
とにかく赤ではない場所が存在しないと赤色は成立しないのです。
舌の味が甘味であると、甘味を感じることはできません。
すべての顕現を可能にする
非─顕現をわたしたちは探してしまうのですが、
顕現を観測する最初の場所がそれである可能性があります。
「人間である」「肉体である」という想念が通り過ぎる瞬間から、それは顔を覗かせます。
あまりに身近すぎて、それは名前を与えられません。
非─赤が、存在、だとは誰も疑っていなかったのです。n
(20180427)
自己を検討することなしには、あなたはこの世界で生き生きとダイナミックに動いていく道を見つけられず、よどんで固まった他人のエネルギーの壁にぶつかるだけです。
マハルシ 聖典は賢者のために書かれたものではありません。なぜなら彼らに聖典は必要ないからです。無知な人たちが聖典を求めることはありません。
解脱を望む人だけが聖典を必要とするのです。それゆえ、聖典は賢者のためのものでも無知な人のためのものでもないのです。
(対話362)
それを探し求め、それとして在りなさい
マハルシ 「存在」はどの場合においても実在です。万象、多様性、個人は非実在です。それゆえ、実在と非実在の統合、混同、偽りの同一化もまた誤りなのです。それはサッド・アサッドヴィラクシャナ、つまり実在と非実在(サットとアサット)を超越することです。実在は神を含めたすべての概念を超越するものです。「神」という名称が使われているかぎり、それは真実ではありえません。ヘブライ語のエホヴァ=「私は在る」(I AM)という表現は神を的確に表しています。絶対なる存在は描写を超えているのです。
(対話112)
マハルシ あなたは探求者であり、何かと合一されることを探し求めています。もしそう仮定するなら、あなたから離れた何かがそこになければなりません。しかし真我はあなたに最も近いものです。そしてあなたは常にそれに気づいています。それを探し求め、それとして在りなさい。そうすれば、それは果てしなく永遠に広がっていくでしょう。そしてヨーガ(合一)という問題もなくなるのです。いったい誰にとっての分離(ヴィヨーガ)なのでしょうか?
(対話211)
質問者 人は自由意志を持っているのでしょうか、それとも人生に起こるすべては運命づけられ、あらかじめ決められているのでしょうか?
マハルシ 自由意志は個人性との関連の中にその領域を保っています。個人性が存続するかぎり自由意志は存在するでしょう。すべての聖典はこの事実に基づいたうえで、自由意志を正しい道に導くように助言しているのです。
自由意志や運命は誰にとって問題となるのか? それを見いだし、その中にとどまりなさい。そうすれば、その二つは超越されるでしょう。
もしあなたが自分を身体と見なすなら、それらは常にあなたを支配するでしょう。
もしあなたが自分を身体と見なさなければ、それらがあなたに影響を与えることはなくなります。
眠りの中では、あなたは身体ではありませんでした。
あなたは今、身体なのでしょうか?
(対話426)
あなたの人生に起こるすべての出来事は、明確な深い意味と目的を持っています。
自分が行うこと、経験することのすべてが、自己に対する理解を深めるプロセスの一部となります。
では、自分が本当に愛情深い人間かどうか、どうしたらわかるのでしょうか。あなた方にとって、その答えはあまりにシンプルすぎて、受け入れがたいかもしれませんが、こういうことです。自分の心をよぎるすべての人、自分の目の前に現れる人のすべてに対して、温かい思いやりの心とその人たちの気持ちを理解する心を持つことができたとき、その人は本当に愛情深い人ということができます。
相手は”神の大いなる光”で満ちているのだ、ということをつねに覚えていてください。そうした態度が、人の”存在”が持つ、言葉では表現できない神秘のなかから、愛の贈り物を引き出してくれます。あなたが彼らに贈り物を与え、その贈り物があなたのところに戻ってくるわけです。与えることと受け取ることは同じことです。あなた方はこの目的のためにおたがいを創造したのです。つまり、「本当の私たちは、自分たちが考えているようなものではない」ということを、おたがいに思い出させてあげるためです。

ディープラーニング
これだけは知っておきたい3つのこと
ディープラーニング(深層学習)とは、人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法のひとつです。人工知能(AI)の急速な発展を支える技術であり、その進歩により様々な分野への実用化が進んでいます。近年開発の進んでいる自動運転車においてもカギとなっているのは、ディープラーニングです。停止標識を認識したり、電柱と人間を区別したりするのも、ディープラーニングが可能にしている技術と言えます。また、電話、タブレット、テレビ、ハンズフリースピーカーなどの音声認識にも重要な役割を果たしています。近年ディープラーニングが注目を集めているのには理由があります。それはディープラーニングが、従来の技術では不可能だったレベルのパフォーマンスを達成できるようになってきているからです。
ディープラーニングの技術は、人間の神経細胞(ニューロン)の仕組みを模したシステムであるニューラルネットワークがベースになっています。ニューラルネットワークを多層にして用いることで、データに含まれる特徴を段階的により深く学習することが可能になります。多層構造のニューラルネットワークに大量の画像、テキスト、音声データなどを入力することで、コンピュータのモデルはデータに含まれる特徴を各層で自動的に学習していきます。この構造と学習の手法がディープラーニング特有であり、これによりディープラーニングのモデルは極めて高い精度を誇り、時には人間の認識精度を超えることもあります。
いかにしてディープラーニングはこれほど優れた成果をあげているのでしょうか。
ひと言で言えば、精度です。ディープラーニングは、かつてない高いレベルの認識精度に到達しています。高い認識精度は、家庭用電気機器の分野ではよりユーザの期待に応えることにつながります。また自動運転車のように安全性が最優先されるべき分野では、認識精度は何より重要な要素であると言えます。ディープラーニングは近年の進歩により、画像認識などのタスクにおいて、人間の認識能力を超えるまでになっています。
ディープラーニングが最初に理論として登場したのは1980年代ですが、近年になって注目を集めるようになったのには2つの理由があります。
1.ディープラーニングには大量のラベル付けされたデータが必要です。例えば、自動運転車の開発には数百万の静止画像と数千時間の動画が必要となります。これまでは、近年のように大規模なデータを入手することが容易ではなかったため、今ほど高いレベルの認識精度を実現できていませんでした。
2.ディープラーニングには高度なコンピュータの処理能力が不可欠です。高性能なGPUは、ディープラーニングに効率的な並列構成になっています。GPUをクラスターやクラウドと組み合わせることで、これまでは数週間を要したネットワークの学習時間を、数時間以下にまで短縮することができました。
ディープラーニングの応用例
ディープラーニングは自動運転から医療機器まで幅広い分野に活用されています。
自動運転:自動車の研究者はディープラーニングを使い、一時停止標識や信号機のようなものを自動的に認識させています。さらに、歩行者検知にも使われており、事故の減少に役立てられています。
航空宇宙・防衛:ディープラーニングは衛星から物体認識を行い、地上の部隊が安全なエリアにいるかどうかを判断するために使われています。
医療研究:がんの研究者はディープラーニングを使い、自動的にがん細胞を検出しています。UCLAの研究チームは、ディープラーニングの学習に必要な高次元のデータセットを作成する高精度な顕微鏡を構築し、正確にがん細胞を見つけ出しています。
産業オートメーション:ディープラーニングは重機の周辺で業務を行う作業者の安全性向上に役立てられています。人や物が機械の危険域内に侵入した場合、これを自動的に検出することができます。
エレクトロニクス (CES):ディープラーニングは、自動の音声翻訳に使われています。例えば、人の声に反応し、人の好みを学ぶことができるホームアシスタントデバイスには、ディープラーニングの技術が活用されています。
ディープラーニングの仕組み
ディープラーニングの多くの手法に、ニューラルネットワークの構造が使われ、そうした背景からディープラーニングのモデルは、ディープニューラルネットワークとも呼ばれています。
通常「ディープ」という表現は、ニューラルネットワークの隠れ層の数について言及しているものです。従来のニューラルネットワークでは隠れ層はせいぜい2~3程度でしたが、ディープニューラルネットワークは150もの隠れ層を持つこともありえます。
ディープラーニングのモデルは、大規模なラベル付けされたデータとニューラルネットワークの構造を利用して学習を行います。これにより、データから直接特徴量を学習することができ、これまでのように手作業の特徴抽出は必要なくなりました。
ディープニューラルネットワークで最もよく使われているのは、畳み込みニューラルネットワーク(CNNまたはConvNet)というネットワークです。畳み込みニューラルネットワークでは学習された特徴を入力データと畳み込みます。この2次元の畳み込み層が、このアーキテクチャを画像などの2次元データの処理に適したものにしています。
畳み込みニューラルネットワークでは、手作業での特徴抽出は必要ありません。画像分類に使う特徴量を探し出す必要もありません。畳み込みニューラルネットワークが画像から直接特徴抽出を行います。関連する特徴量は事前には学習する必要がありません。大量の画像データによる学習を通して学び取られます。この自動的な特徴抽出の仕組みにより、物体認識などのコンピュータビジョンのタスクにおいてディープラーニングのモデルは高い分類精度を持つことになりました。
畳み込みニューラルネットワークは、数十から数百もの隠れ層により、1つの画像に含まれる数々の特徴を学習していきます。層が進むにつれて、より複雑な特徴を学習します。例えば、最初の隠れ層ではエッジ検出など単純な特徴からスタートして、最後の層ではより複雑な特徴、特に認識したい物体の形状の学習へと進んでいきます。
機械学習とディープラーニングの違いとは?
ディープラーニングは機械学習のひとつの特殊な形と言えるものです。通常の機械学習のワークフローは、画像からマニュアルで特徴量を抽出することからスタートします。そして、抽出した特徴量を使って画像内の物体を分類するモデルを作成します。一方、ディープラーニングでは、特徴量は画像から自動的に抽出されます。また、ディープラーニングは「エンドツーエンドな学習」を実行できます。つまり、ネットワークは生の画像データと、分類など処理すべきタスクを与えられ、自動的にその処理方法を学習していきます。
もう一つの大きな違いは、シャローラーニングがデータの増加に対して性能が頭打ちになるのに対して、ディープラーニングではその性能がデータのサイズに対してスケールする点にあります。 bb ディープラーニングの大きな利点は、データが増えていくにつれ、しばしばその精度を向上させていくことができる点にあると言えるでしょう。
一般的な機械学習では、特徴量と分類器は手動で選択されるのに対して、ディープラーニングでは特徴量の抽出とモデリングは自動的に行われます。
機械学習とディープラーニングから最適な手法を選ぶ
機械学習には幅広い手法とモデルがあり、用途や処理するデータサイズ、解決したい課題のタイプに合わせて選択することができます。一方、ディープラーニングを成功させるには、データを高速で処理するためのGPUだけでなく、モデルを学習させるための大量のデータ(数千もの画像)が必要となります。
機械学習かディープラーニングを選ぶときは、まず高性能なGPUと大量のラベル付けされたデータがあるかどうかを確認して下さい。もしどちらかが欠けている場合、ディープラーニングではなく機械学習が適当と言えるでしょう。ディープラーニングは一般的に機械学習より複雑であるため、信頼できる結果を得るには少なくとも数千の画像が必要となります。より高性能なGPUがあれば、そうした大量の画像の学習に必要な時間はさらに短縮していくことができます。
ディープラーニングモデルの作成、学習方法
ディープラーニングを使用した物体認識には下記の3つの手法がよく使われています。
ゼロから学習する
ディープネットワークをゼロから学習するには、大量のラベル付けされたデータを集め、特徴量を学習しモデル化するためのネットワークを設計する必要があります。この方法は、新しい分野での応用や、出力するカテゴリ数が多い場合には有効ですが、大量のデータと学習時間が必要であることから、使用頻度はそれほど高くありません。通常、こうしたタイプのネットワークの学習には、数日から数週間といった長い時間を要します。
転移学習
多くのディープラーニングの応用では、学習済みモデルの微調整を行うタイプのアプローチとして、転移学習が利用されています。この転移学習では、AlexNetやGoogLeNetといった既存の学習済みのネットワークに対して、そのネットワークでは事前には学習されていないクラスを含むデータを与えて学習させます。その場合、学習済みのネットワークには若干の修正が必要となりますが、ネットワークの学習後には本来の「1000種類のカテゴリへの分類」の代わりに「犬か猫か」といった新しいタスクを行わせることができるようになります。この手法には、ゼロからネットワークを学習させる場合と比較して必要なデータ数がはるかに少なくて済むという利点があり(何百万ではなく数千の画像)、計算時間は数分から数時間程度に短縮されます。
転移学習では、既存のネットワークに対して切り貼りをしたり、新しいタスクに対して拡張を行ったりすることが必要となるため、ネットワークの内部構造にアクセスするインターフェースが必要となりますが、MATLAB®にはこうした転移学習を手助けするためのツールや関数がいくつも揃っています。
特徴抽出
やや一般的ではありませんが、ディープラーニングのより専門的な手法として、ネットワークを特徴抽出器として使用する方法があります。ネットワークのすべての層は画像からある種の特徴量を抽出する役割を持っているため、我々は推論の任意の段階でこうした特徴量を取り出すことが可能です。このようにして取り出した特徴量は、サポートベクターマシンなどの機械学習モデルへの入力として使用することができます。
GPUでディープラーニングモデルを高速化
ディープラーニングモデルの学習には、数日から数週間といった長い時間を要することがありますが、GPUを使うことで処理を大幅に高速化できます。MATLABをGPUと併用することで、ネットワークの学習に必要な時間を減らし、画像分類に必要な学習の時間は数日から数時間に短縮することができます。ディープラーニングの学習においては、MATLABを使うことで、GPUプログラミングの詳細を知らなくてもGPUを使いこなすことができてしまいます。

まるでアーミーナイフ! 正体不明の多目的スパイウェア、5年の時を経て発見される
異なるコンポーネントを80も搭載し、いくつもの独自機能をもつ高性能なスパイウェアが発見された。その名も「TajMahal」と呼ばれるスパイウェアは、洗練されたつくりと、中央アジアのある国の大使館のネットワークから見つかった事実を踏まえると、国家ぐるみの諜報活動の一環である可能性が高い。少なくとも5年は水面下で“活動”していたというスパイウェア、いったいどんな機能を備えているのか。
セキュリティ研究者だからといって、毎日のように新たな国家的ハッキング集団を発見しているわけではない。ましてや、こんなスパイウェアなどそう簡単に見つかるはずはない。なにしろ80もの異なるコンポーネントをもち、これまでにない独自のサイバー諜報活動の機能を備え、しかもその活動を5年以上も隠し通してこれたのだ──。
セキュリティ企業のカスペルスキーが4月10日(米国時間)、そんな新しいスパイウェアのフレームワークを発見したことを明らかにした。同社のセキュリティ研究者であるアレクセイ・シュルミンによると、それはスパイ活動の機能をもつ多種多様なプラグインを備えたモジュール式のソフトウェアである。
データを盗む際に使うファイル名から、このスパイウェアは「TajMahal(タージマハル)」と名づけられた。シュルミンによると、TajMahalは80のモジュールを備える。
ただし、これまでのスパイウェアによくあるキーロガーや画面キャプチャーといった機能だけではない。これまで見たこともないような、よくわからない機能を備えたモジュールもあるのだという。例えば、プリンターの印刷待機状態にある文書データを横取りしたりできる。
また、特定のファイルを追跡し、感染した端末にUSBドライヴが挿入されると、そのファイルを自動的に盗んだりもできる。カスペルスキーによると、このユニークなスパイウェアツールキットには、すでに知られている国家的ハッカー集団の関与を示す特徴は一切ないという。
極めて洗練された大がかりなスパイウェア
「これほどまで多くのモジュールの組み合わせからわかるのは、この先進的かつ持続的な脅威(APT)が極めて複雑なものであるということです」と、シュルミンはカンファレンスでの発表前に『WIRED』US版に答えている。このAPTという専門用語からわかるのは、ハッカーたちの手口が洗練されていて、しかも長期にわたってターゲットとなるネットワークに潜伏している可能性だ。
「TajMahalは極めて先進的で洗練されたフレームワークです。これまでにほかのAPT攻撃では見たことのないような、多くの興味深い特徴を備えています。こうした事実から考えると、このAPTは完全に新しいコードでつくられています。ほかのどのAPTやマルウェアのコードとも似ていません。つまり、TajMahalは特殊で実に興味深いスパイウェアだと言えるでしょう」
カスペルスキーによると、最初にTajMahalが発見されたのは昨秋のことで、感染が見つかったのは中央アジアのある国の大使館のネットワークだけだという。それがどの国なのかは、同社は明らかにしていない。
TajMahalのつくりが洗練されていることから、別の国で開発された可能性が高いとシュルミンはみているという。「これほどまで大きな投資になる開発案件が、たったひとつの標的のために実行されるとは考えにくいと言えます。まだ特定されていない被害者がいるか、このマルウェアの別のヴァージョンが出回っているか、あるいは両方でしょうね」
既知のハッカー集団とのつながりは不明
国家安全保障局(NSA)のエリートハッキング集団として知られる「Tailored Access Operations」の元メンバーであるジェイク・ウィリアムズは、今回の発見について、非常に用心深く慎重な国家レヴェルの情報収集活動の存在を示唆するのではないかと指摘する。
「これほどの拡張性を実現するには、大規模な開発チームが必要になるはずです」と、ウィリアムズは言う。また、検知を回避する高い能力を備えているうえ被害が1件しか発見されていないことから、極めて用心深くターゲットを定め、姿を隠し、そして高いセキュリティのもとに活動しているのだとも指摘する。
「運用上のセキュリティを確保し、厳重な統制のもとにタスクを実行するあらゆるものが、このプログラムのなかには詰め込まれています」
シュルミンによると、カスペルスキーは現時点では既知のハッカー集団に結びつく手がかりを得られていない。過去に使われたコードと比較したほか、共通の技術基盤や類似したテクニックなどを探したが、情報がないのだという。
というのも、狙われた中央アジアの国は、ハッカーたちの身元につながる手がかりをきちんと出すことがないうえ、説明が非常に曖昧だったからだ。それに、中央アジアとかかわりをもつ国で最先端のハッカー集団を擁しているとなれば、中国やイラン、ロシア、米国など多くが候補に挙がってくる。
スパイウェア「Yokohama」の恐るべき機能
またカペルスキーは、TajMahalを仕掛けたハッカー集団が、どうやって標的となるネットワークへのアクセスに成功したのかも解明できていない。わかっているのは、TajMahalに含まれる「Tokyo」と名づけられたバックドア(裏口)のプログラムを、ハッカーが最初にコンピューターに仕掛けたことだけだ。
このバックドアは、しばしばハッカーに悪用されることがあるスクリプト言語「PowerShell」を利用している。これを使ってハッカーは被害を拡散し、コマンド&コントロールサーヴァーに接続し、多くの“機能”をもつスパイウェアを埋め込む。このTajMahalを構成するコンポーネントは「Yokohama」と名づけられており、そこに何十ものモジュールが備えられている。
カペルスキーの研究者たちが最も着目したのは、まるでスイスアーミーナイフのようなYokohamaの多機能性だった。Yokohamaは、多くの国家ぐるみのスパイ活動で求められる優れた能力のほかにも、いくつかの独特な機能を備えている。
まず、感染したコンピューターにUSBドライヴが差し込まれると、中身ををスキャンし、そのリストをコマンド&コントロールサーヴァーにアップロードする。この段階で、ハッカーは抽出したいファイルを選んで盗むことができる。
もし途中でUSBドライヴが取り外されても、TajMahalが同じ端末のUSB端子をモニタリングする。そして次に同じUSBドライヴが挿入されたときに、標的のファイルをすかさずアップロードするのだ。ほかにもファイルをCDに記録したり、プリンターで印刷したりする機能をもつモジュールもある。
いずれも決して派手な機能ではないが、感染したコンピューターにある膨大かつ無秩序なデータのなかから、どのファイルが盗むに値するのかをハッカーが慎重に見極めていることを示唆している。「その情報がなんらかの意味で重要でないと、人はそれを印刷したり、USBスティックに保存したり、CDに焼いたりはしませんから」と、シュルミンは言う。
なぜ5年以上も見つからなかったのか?
TajMahalの洗練度合いや多機能性を考えると、これほどまで長期にわたって見つからずに済んだのは注目に値する。カスペルスキーによると、狙われた中央アジアの国の大使館は、少なくとも2014年から被害を受けてきたという。
しかし、TajMahalに組み込まれたさまざまなモジュールがプログラムされた時期をタイムスタンプから判断すると、2014年のずっと前に仕掛けられ、そしてずっとあとまで使われていたことがわかる。あるモジュールの利用時期は2013年までさかのぼり、また別のモジュールの利用時期は2018年だった。
「いずれにせよ、TajMahalは5年以上にわたり水面下に潜んでいました。それが比較的活動が少なかったからなのか、それとも別の理由なのかは興味深い問題です」と、シュルマンは語る。「そして、サイバースペースで起きていることすべてを完全に可視化するなど絶対にできないという現実を、サイバーセキュリティに携わる人々に気付かせてくれました」
TEXT BY ANDY GREENBERG
WIRED(US)
2019.04.11 THU 12:30
PR
HN:
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