求めないこと


さて、あなたはいま、まったくの偽りにすぎない伝統的なアプローチを否定することによって第一歩をふみ出したのである。しかし、あなたがそれを一つの反動として否定した場合は、また別な定型が生まれてあなたをその中に閉じこめる結果になる。また、こうした伝統的なアプローチを否定するのはよい考えだと自分自身にいいきかせても実際に何もしようとしなければ、あなたの進路はそこで閉ざされてしまうのである。しかしながら、伝統的アプローチがいかに愚かで未熟であるかを理解した上でそれを否定するならば、そしてまた、あなたが自由で何ものをも恐れないという理由から偉大な知力をもってそれを拒否するならば、あなた自身の内部と周囲に大きな動揺がその結果として生じるが、あなたは社会的体面という落し穴から脱出することができよう。そして、自分がもはや何ものをも求めていないことを悟るであろう。求めないこと──それが学ばなければならない第一のことである。何かを求めているときは、あなたはただショーウィンドーののぞき見をして歩いているにすぎないのである。


【『自己変革の方法 経験を生かして自由を得る法』クリシュナムルティ著、メリー・ルーチェンス編/十菱珠樹〈じゅうびし・たまき〉訳(霞ケ関書房、1970年)】
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Fiora & nobody