いつのまにか、戦後から戦前に変わってしまったように思える。
技術が進歩して手が長くなったのだとすれば、長い手は犠牲者の数も増やすかもしれない。
戦前は戦前でも、
過去の戦前と同質だと思わないほうがいい。n250005



アメリカ海軍の対潜哨戒機P8


CTF72=第72任務部隊。西太平洋の広大な海域の監視、偵察活動を担うアメリカ第7艦隊の部隊だ。10月、部隊の訓練に同行した。この海域で今、アメリカ軍と中国軍の水面下のせめぎ合いが激しさを増している。 (国際部記者 山尾和宏 2019年11月1日 国際特集)


10月4日午前10時、アメリカ軍厚木基地。全長2400メートルの滑走路のすぐ脇にその機体は止まっていた。


アメリカ海軍の対潜哨戒機P8。ギリシア神話の海の神「ポセイドン」の通称で呼ばれている。灰色の機体は全長およそ40メートル、日本には2013年に配備が始まった。


「P8は8~9時間連続で飛行でき、空中で給油すればさらに長時間の飛行も可能だ。海面のあらゆるものを発見する高性能の機体だ」


出迎えた部隊の指揮官ラザフォード司令官は落ち着いた口調で説明した。CTF72の任務は他国の艦艇や潜水艦の探索、追跡、監視。この海域で活動を活発化させる中国人民解放軍の動きを監視するいわば最前線の部隊だ。



CTF72は青森県の三沢基地と沖縄県の嘉手納基地に10機前後のP8を配備し、24時間態勢で任務にあたっている。


「対象物を発見したらその海域に急行し、さまざまな装置で分析する」。こう説明するのは戦術航空士=Tactical Coordinatorと呼ばれる要員だ。


機体の中央部に並ぶ情報系やレーダーなどのあらゆる装置を操り、艦艇や潜水艦を追跡、監視するための戦術を設計、実行する。


P8の9人のクルーのうち操縦士は3人、残る6人は戦術航空士とその要員だ。機体に乗り込むとクルーは手際よく離陸の準備を整え、目標の海域に向かった。


P8の監視・偵察は


レーダーに映る船影。液晶モニターには周辺海域の船舶の位置が示されている。目標の海域に到達するとクルーから救命胴衣を身につけるよう指示された。降下に備えた念のための措置だとの説明。するとP8が急激に高度を下げ始めた。



窓の外に目をやると海面がすぐ目の前に迫っているように見える。高度およそ60メートル。


モニターを見ていた1人がこちらを振り向き「右の窓を見ていろ。10秒後に船が来るぞ」と話した10秒後、窓から石油タンカーが見えた。



機体下部に備えた高性能カメラで対象船舶の画像を撮影し、識別、分析する。「われわれはどんな小舟でも見つけてみせる」。そう語る要員の口調に自信がにじんでいた。


“最大”の脅威


P8の最も重要な任務が潜水艦の探知、追跡だ。海中に潜む潜水艦の行動はアメリカ海軍の艦艇の大きな脅威となる。



機体の後方には高さ1.5メートル、直径1メートルほどの灰色のタンクが並んでいた。内部に収められている「ソノブイ」と呼ばれるソナー装置で海中の物体の位置を特定する。


潜水艦の存在が疑われると大量のソノブイを海中に投下して探知を試みる。アメリカ国防総省の分析では中国軍は潜水艦を来年までに70隻態勢に増強する。


西太平洋で潜水艦の活動が活発化すればアメリカ軍の行動が大きく制約されるおそれがある。「われわれは中国軍の展開状況を注視している」。ラザフォード司令官はその能力に警戒をにじませた。


アメリカ軍の思惑


西太平洋でアメリカ軍は今、どのような状況に置かれているのか。海上自衛隊の潜水艦艦長や情報本部の情報官、在アメリカ日本大使館の防衛駐在官を歴任した伊藤俊幸元海将(金沢工業大学虎ノ門大学院教授)を訪ねた。



「中国軍は最低でも空母5隻を保有し、日本の真南に常時1隻、南シナ海に常時1隻、インド洋に常時1隻と空母がいる状態を作り出そうとしているのではないか」


中国軍が南シナ海の空域、さらに海域の支配の確立をねらっているのではないか。中国軍はこの10年で艦艇をおよそ60隻増やし189隻態勢に増強したと分析されている。


ミサイル能力も急速に向上。海上を航行する艦艇を精密攻撃できるとする対艦弾道ミサイルの開発・配備を進めている。



中国の軍事パレード


「空母キラー」とも呼ばれる東風21D=DF21Dの射程は1500キロ以上、さらにこれを4000キロに伸ばしたともされる東風26=DF26はアメリカ軍の拠点のグアムに到達できるとして「グアムキラー」の異名がつけられている。


この2つのミサイルの射程を、中国大陸の沿岸部を中心に円で描くと南シナ海の全域を二重にカバーしていることがわかる。


中国軍はことし6月、対艦弾道ミサイル6発を初めて南シナ海に発射し、その能力を誇示した。



中国が建設した人工島


ミサイルに加え中国軍は南シナ海の4つの島や人工島に飛行場を整備している。ここに戦闘機部隊が配備されれば、その行動範囲もまた南シナ海の全域を覆うと分析されている。


これらの戦力で空域の優勢を確保しアメリカ軍の接近を阻んだうえで空母を常時展開させ海域の支配力を高めようとしていると伊藤元海将は分析する。


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