御意図の計画 Fiora20191223



餓えて、朽ちて、嘆いて、人々の苦しみに目をつぶる。
お釈迦様の反対だね。
悪が存在できている理由、言わば葉脈(ようみゃく)に目をつぶる。
一人一人がどこかで、大なり小なり目をつぶる。
総合的な結果が、このいまの世の中だ。
一人一人はごく微量の、でも偉大な創造力を分け与えられている。
世の中に対する責任を、認める人と認めない人にまず分かれる。
ミミズは土の一部だ。人間は神が託した天地(あめつち)の一部だ。n230020



「自分のため」に生き、また「みんなのため」に生きる、そうした人間はどうやったら育つのか。


「人間不平等起源論」「社会契約論」等の著作でフランス革命を思想的に準備したといわれる、18世紀の哲学者ジャン=ジャック・ルソー(1712~1778)。彼は「近代教育思想の祖」とも呼ばれ、著書「エミール」は、「近代教育学のバイブル」として今も多くの人に読み継がれています。しかし、この「エミール」は単に「教育学」の書ではありません。ルソーはこの書物に自らの哲学・宗教・教育・道徳・社会観の一切を盛りこみました。


「万物をつくる者の手をはなれるときすべてはよいものであるが、人間の手にうつるとすべてが悪くなる」という有名な言葉が示すように、徹底した自然の賞揚、人為への批判がその思想のベースを貫いています。しかし、決して教育を自然まかせにしようというのではありません。人間の成長や発達をもたらす力として「自然」「人間」「事物」の三つの力を挙げ、それらを相互に矛盾することなく、調和させていくことを教育の根本理念にすえて、「人間を作っていく技術」にあらためて光を当てなおそうとするのです。


「自由な主体」というとき、ルソーは二つを考えていました。一つは、「名誉・権力・富・名声といった社会的な評価から自分を測るのではなく、自分を測る基準を自分の中にもっていること」。もう一つは、「民主的な社会の一員として、一緒にルールを作り自治をしていくことのできる公共性を備えていること」。


ルソーは、自分のためだけに生きる「自然人(オム・ナチュレル)」と社会全体の中で自分を位置づける「社会人(オム・シヴィル)」という相対立する二つの人間像を提示し、折り合いにくいこの二つを統一した人間を育てることこそ、人間が幸福の障害を取り除くための大きな鍵を握っているという。


ルソーに預けられたエミールは、「快・不快」を基準に生きる幼年期から「用・不用」という基準に生きる少年期へと成長していく。ルソーはこうした発達段階を無視した従来の教育方法を徹底的に批判。常識に反して「読書」「歴史教育」「道徳教育」をこの時期に行うことを否定する。代わりに行うのは「そら豆畑のエピソード」に代表される、徹底して「好奇心」「有用性」に基いた教育だ。エミールは生々しい事件に直面しながら、自らの体験の中で「初歩の道徳感覚」や「天文学や地理学の有用性」を学んでいく。それはお仕着せの知識ではなく、エミールが自ら掴みとっていく生きた知識である。


十八世紀のフランスで活躍したジャン=ジャック・ルソー(一七一二~七八)は、近代の「自由な社会」の理念を設計した思想家です。
ルソーの考えた「自由な社会」とは、平和共存するために必要なことを、自分たちで話し合ってルール(法律)として取り決める「自治」の社会でした。権力者が勝手な命令を押しつけてきたり、一部の人たちだけが得をする不公平な法律や政策がまかりとおったりすることのない、そんな社会です。


人びとが集まって人民集会(議会)を開くときは、提出された法案についてそれが本当に皆の利益になるかどうか(一般意志といえるかどうか)を議論します。最終的には多数決で決めるのですが、その法の正当性は「多数が賛成したから」という点にあるのではなく、それが「一般意志である=皆にとっての利益である」という点にある、とルソーはいいます。つまり、いくら多数が賛成したとしても、一部の人に損害を与えるような不公平な法律には正当性はないのです。


〝自分も含めたみんなが得になるような〟ルールをつくっていく。そういう姿勢をもつ人間は、どうやったら育つのか。
みんなのため、といっても自分を犠牲にして国家に尽くすということではなく、〝自分も含むみんなの利益〟をきちんと考える、ということです。


〈文明が発達した相互依存的な社会のなかでは、人は自分を、名誉・権力・富・名声のような社会的評価でもって測るようになり、そしてまわりの評価にひきずりまわされる。それでは自由とはいえない。そうではなくて、自分の必要や幸福をみずから判断して「自分のために」生きられる人間こそが真に自由な人間だ〉。こうルソーは考えました。自分のため、といっても単に利己的な人間ということではありません。自分にとって必要なことは何か。また自分はどう生きたいのか。つまり自分の生き方についての価値基準をしっかりと「自分のなかに」もっているということです。


ルソーがイメージしていたのは、対等に、お互いの都合や利害を正直に出し合い聞き合いながら、「どうするのがみんなのためにいちばん良いのか」を議論することでした。しかし「空気」を恐れながら生きるとき、人は自分の都合を口に出すことはできないでしょう。私たちの社会は人権と民主主義を柱とする憲法をもっていますが、部活やサークルや地方自治の場面など、いろいろなところでほんとうに民主的・自治的な場面をつくれているかといえば、首を傾げざるをえないと思います。


16歳になり思春期を迎えたエミールはいよいよ社会の中に入っていく。その際に最も大事な要素は「あわれみ」の感情。人間が元々もっている「自己愛」を「あわれみ」の感情へと上手に育て拡大することで、貧しい人々への共感や不平等な社会への憤りをもつ「公共性」を備えた存在へとエミールは成長していく。


そういう存在者が存在するのだ。どこに存在するのが見えるのか、とあなたはきくだろう。回転する天空のなかにだけでなく、わたしたちを照らしている太陽のなかにも存在するのだ。わたし自身のうちにだけではなく、草をはむ羊、空を飛ぶ小鳥、落ちてくる石、風に吹かれていく木の葉のうちにも存在するのだ。
 (ルソー「エミール」第四編 「サヴォワの助任司祭の告白」より)


とても美しいイメージで語られる「ある意志」「ある英知」。これは、ルソーが考えた神のイメージです。あらゆる存在を貫く「理法」のような存在としての神を基盤にした宗教は、「自然宗教」「理神論」と呼ばれています。ルソーは、全ての宗教に共通する根源がこのような「自然宗教」にあると考えました。


ルソーが生きた当時のヨーロッパは、カトリックとプロテスタントの間で、凄惨な対立が繰り広げられていました。同じ神を信じるものたちの間で引き起こされる苛烈な弾圧、虐殺……ルソーはこうした事態に強い疑問をもっていたのではないかと思います。


自然状態にある静止した物体が運動するには、何らかの意志が介在する必要があると考えます。ちょうど、静止した石は人間が拾って投げなければ動かないように。世界を見渡せば、天体は一定の法則のもとに運行しているし、全ての物質、物体は調和した秩序のもとに動いている。だとすれば、同じようにそこに何らかの意志や英知が働いているのではないか。


キリスト教、イスラム教、仏教といった既存宗教の相互の違いは本質的なものではなく本来一つのものであり、固有の儀式作法の違いはその宗教が生まれた民族、国、土地などの違いから生じるものだ。人々はそうした儀式作法によって神に接しているのだから、それを本質的なものと考えるのは間違いだけれど、それが本質的でないからといって軽蔑したり否定したりすべきではない。


カントは、「サヴォワの助任司祭の告白」の信仰箇条を踏まえて、「神の存在、自由意志の存在、魂の不滅は、理性によって合理的に証明できるものではないが、人間がよく生きようと欲する限り、それらを信じないわけにはいかなくなる、そういう種類の事柄だ」と考え、この論理を「実践理性の要請」と呼びました。


「エミール」は、「一人一人が真理を知る能力をもった人に育ち、正しいことを意志する人に育ってはじめて、全体意志と一般意志が一致する理想社会が実現する」という「社会契約論」のテーマを補完するための「人間論」でもあったのだ。


戦後70年というときを経て果たして民主主義というものが日本に根付いたのか。あるいは、私たちは本当に民主主義の本質を知りえているのか。空気のように当たり前に享受しているこのシステムについて、私たちは実は何も知らないのではないか。


ルソーを取り上げるにあたって、「社会契約論」と「エミール」のどちらを選ぶかについて、実は悩みました。より直接的に民主主義について考えるなら「社会契約論」ではないかとも思いました。しかし、全体を通読する中で驚いたのは「エミール」の5編の中に、ミニ社会契約論ともいえる論述が組み込まれていること。いや、それだけではありません。ここには、ルソーの哲学、倫理学、人間論、社会論、宗教論、教育論の全てがカオスのように全て盛り込まれていること。「エミール」を使えば、ルソー思想の全体像が描けるのではないかと直観しました。


「エミール」という著作のねらいは、「名誉・権力・富・名声といった社会的な評価から自分を測るのではなく、自分を測る基準を自分の中にもっていること」と「民主的な社会の一員として、一緒にルールを作り自治をしていくことのできる公共性を備えていること」の間、つまり「自分のため」と「公共のため」という折り合いにくい二つを両立する「真に自由な主体」がどうしたら実現できるか、ということだったんですね。


大事なのは、それぞれが自分の意見や自分の都合をしっかりと出し合うことだ。そして、対話を通してしっかりと煮詰めていき、互いの事情がわかった上で「どうすれば一部の人だけではなく、どんな人にとっても利益になるのか」を導きだしていくことだ。ルソーが「一般意志」という言葉で示そうとしたのはそういう理念であり、これこそが民主主義の根幹に据えられるべきものなのです。私たちは、こういう対話のプロセスをいつしか忘れて、「意見が割れたら即多数決、それが民主主義だ」と勘違いをしていることが多いのです。



北朝鮮、「全般的武力」の強化決定=正恩氏、党軍事委に出席
時事通信社 2019/12/22 10:28


【ソウル時事】朝鮮中央通信は22日、北朝鮮が金正恩朝鮮労働党委員長の出席の下、党中央軍事委員会拡大会議を開催したと報じた。会議では「全般的武力」を強化するための対策を討議、決定。正恩氏は「今後の軍建設と軍事政治活動で基本とすべき方向と方法を具体的に明らかにした」という。


会議の日時や対策の内容などは不明。北朝鮮は今月下旬に党中央委員会総会を開催し、「重大な問題を討議、決定する」と表明しており、正恩氏は軍幹部らを集めた軍事委で、今後の軍事的な活動方針をめぐり、事前に指示した可能性もある。


会議には、党中央軍事委員のほか、軍総政治局、総参謀部、人民武力省の幹部らが出席し、「自衛的国防力を発展させるための核心的な問題」を議論。北朝鮮は弾道ミサイルなどを「自衛的国防力」に位置付けており、こうした兵器の開発強化についても話し合ったとみられる。



香港デモの「飛び火」に焦る中国共産党 【澁谷司──中国包囲網の現在地】
2019.12.21


《本記事のポイント》
• "だまし討ち"の火葬場建設に抗議殺到
• 中国史では、革命は南から起きる
• 中国共産党が、じわじわと追い詰められている


民主派デモが盛り上がる香港から、わずか100キロメートルしか離れていない中国広東省の茂名市化州市文楼鎮(もめいしかしゅうしぶんろうちん)に、デモが飛び火した。


"だまし討ち"の火葬場建設に抗議殺到


事の発端は、化州市人民政府が、文楼鎮中心部から十数キロメートルの場所に、1万5000平方メートルのエコパークをつくるという案を発表したことだ。それに伴い、政府は村民から建設賛成署名を集めた。お年寄りさえ、署名した。


ところが11月27日、政府は突如、エコパークの中に、火葬場も建設すると公表した。村民を騙したのである。


近年、中国の人々は環境問題に敏感になっている。激怒した村民らは、政府に対して抗議すべく立ち上がった。デモの中には、13歳にも満たない少年もいた。


しかし政府は、すでに村民の抗議を予想していた。およそ1000人の特殊警察を待機させていたのである。警察は抗議者に対し、装甲車や高圧水車、ヘリコプター、ドローンで鎮圧を行おうとした。28日・29日の両日で、2人の村民が死亡し、多数の負傷者も出たという。そして、村民約50人が警察に逮捕されている。


騒乱の際、村民らは口々に「時代革命、光復茂名」と叫んだ。まさに、香港で叫ばれているスローガン「光復香港、時代革命(香港の解放、私たちの時代の革命)」の"茂名バージョン"である。また、「香港独立」を真似て「茂名独立」という言葉まで登場した。結局、化州市人民政府は、火葬場の建設構想を撤回すると発表した。


香港デモの飛び火は、中国共産党にとって"悪夢"だろう。


中国史では、革命は南から起きる


中国史を紐解けば、大陸での革命は、しばしば南部(広東省)から始まっている。


例えば、孫文の「中国革命」も広東省広州市から始まった。孫文の後継者、蒋介石も広州市から「北伐」を開始している。


共産党は、香港が火付け役となり、広東省に騒乱が発生すれば、中国全土に拡大するのではないかという恐怖心を抱いている。そのため、徹底的に武力弾圧を行う。


追い詰められる中国共産党


しかし共産党は、活気のある民間企業と"ゾンビまがい"の国有企業を合体させる政策「混合所有制」のツケがまわり、経済危機を迎えている。


その様子は、トランプ米大統領の「香港人権法」署名への報復にも表れた。


中国政府は12月2日、経済報復ではなく、米軍の艦艇や航空機が整備のために香港に立ち寄ることを拒否する措置を決定した。


大統領選挙を前に好景気を維持しておきたいトランプ政権に対し、経済報復を行えば、それなりのインパクトを与えられたはずである。しかし、そのしわ寄せが回り回って中国に及べば、経済は壊滅状態に陥る。


中国はいつまで、武力に頼った政権を維持できるのだろうか。



ウイグル弾圧は習近平だけの過ちではない
READING CHINESE CABLES
ニューズウィーク日本版
2019年12月17日(火)19時45分
水谷尚子(明治大学准教授、中国現代史研究者)


<党上層部の作成した文書が流出したことによって世界的に国家主席への批判が高まっているが、ウイグル人の中国化政策は今に始まったことではない>


11月、中国共産党の新疆ウイグル自治区関連文書が大量流出した。新疆では2016年頃からウイグル人統治に関する行政文書が国外流出していたが、今回のものは党上級機関が作成した「重要文献」だ。


流出文書を公表したニューヨーク・タイムズ紙は11月中旬、「習近平(シー・チンピン)が(ウイグル人への弾圧を)容赦するなと、党幹部を対象とする非公開演説の席で述べていた」と暴露した。そして11月下旬には、国際調査報道ジャーナリスト連盟(ICIJ)が強制収容を共産党が国家政策として遂行していることを裏付ける流出文献を公開した。こうした一連の暴露によって現在、習近平国家主席への批判が世界規模で高まっている。


しかし、これまでの新疆史を見れば、共産党による新疆「一体化」は今に始まったことではなく、1人の政治家の誤りで片付けられる事柄でもない。1949年の中華人民共和国成立後、人民解放軍の新疆進攻、生産建設兵団の形成、西部大開発、ウイグル語による教育の廃止、「一帯一路」戦略そして今回のテュルク系民族強制収容......と、じわりじわりと「次の一手」を打ちつつ、一体化政策は今に至る。共産党は満人(満州族)が漢人化していったように、テュルク系ムスリムも漢人化できると思っているようだ。


新疆をどう統治していくかについては、共産党政権下でも為政者によって政策の揺れは存在した。ただ習の時代になると、チベットの弾圧に加担した陳全国(チェン・チュエングオ)が自治区党書記となり、現在のような一体化政策が大々的に遂行されていく。


旧ソ連ではいわゆる「少数民族」の出自でも党中央幹部になる者がいたが、中国共産党はウイグル人を「木偶(でく)」として扱うだけである。今月9日、自治区主席でウイグル人のショホラット・ザキルが外国人記者を前に「職業技能訓練センターの受講生は(脱過激化教育を)全員修了した」と述べたが、在日ウイグル人たちは「センター送りにされた身内からは、いまだに一切連絡がない」と語気を強める。ウイグル人政治家を傀儡として使うことも今に始まったことではない。前自治区主席のヌル・ベクリは汚職のため投獄されたが、口封じのためだったとの説もある。


新疆の一体化政策は、国内植民地の状態から実質的な中国化を実現するための綿々と続く中国共産党の戦略である。1950年代から80年代までは経済的理由からその遂行の速度が緩かっただけであり、現在の急激な変化は中国の経済力増大と密接に関係する。


文書流出の女性に殺害予告が


星の数ほどの監視カメラを各地にちりばめたウイグル人監視システム「一体化統合作戦プラットフォーム」では、2017年6月中旬からさまざまなデータが集積され、分析結果が強制連行に使われた。データは自治区党委員会の「厳重取締り・敵地攻撃戦前線指揮部」という名の機関に集積されている。その名称から共産党は新疆政策を「敵地攻撃」と位置付けていることが分かる。システムには出入国記録や在外中国大使館の情報が記され、外国籍を取得したウイグル人も「国境地帯で規制を張り、入境したら身柄を確実に確保せよ」と強制連行の対象となることが流出文書に記されている。


今回の上層部文書の流出に関わったオランダ在住のウイグル人女性は現在、オランダ警察の庇護下にあるという。文書が公開されるまでの間、彼女は「中国当局から殺害予告を受けていた」と、ラジオ・フリー・アジア(RFA)に語っている。


「遅れて来た帝国主義国家」の民族浄化を、外国人であるわれわれはどうやったら止めることができるのだろう。


<本誌2019年12月24日号掲載>



韓国・北朝鮮・中国はもはや有事…「日本海防衛」という切迫した問題
東アジアの運命は?
大原 浩 2019.12.22
国際投資アナリスト
人間経済科学研究所・執行パートナー


中韓北3国への米国の怒り


トランプ大統領は、11月27日に「香港人権・民主主義法案」に署名した。さらに、米下院は12月3日に「ウイグル人権法案」を、407対1の圧倒的賛成多数で可決した。


「ウイグル人権法案」では、陳全国氏(共産党政治局委員で同自治区の党委員会書記)を制裁対象に指定するようトランプ大統領に求めているが、成立すれば、中国共産党の政治局委員の制裁指定は初めてとなる。


10月15日の記事「『ウクライナ疑惑』で、トランプの大統領再選は確実になりそうだ」や、11月6日の記事「米国は変わった、とうとう高官が共産主義中国を『寄生虫』呼ばわり」で述べた様に、今やトランプ大統領がハト派に見えるほど、民主党左派を中心とするタカ派(対中国強硬派)の怒りはすさまじい。そして、その根底には「人権問題」が関わっている。


トランプ氏は、あくまでビジネスマンだから「対中貿易戦争」を仕掛けたのも、一種の脅しであり、ゲームを有利に進めるための手札の1つにしか過ぎない。


しかし、「人権問題」が主張の根底にある民主党左派、あるいはもっと広く言えば良識ある米国民は、「経済的利害」だけでものを考えているのではなく「政治信条」で正邪を判断する。


「人権問題」は、普段騒がしい自称人権活動家(人権屋)が香港やウイグルについてはだんまりを決め込んでいる日本と違って、「米国の建国の理念である自由と平等」に関わる核心的利益であるから、これに関して米国民は妥協をしないであろう。


したがって、本音では「そろそろ潮時かな」と思っていたとしても、民意に敏感なトランプ大統領が、共産主義中国に対してより強硬な姿勢をとり続ける可能性がかなりある。


北朝鮮についても同様だ。もちろん米国民は米国の若者の血が流されることを望んでいないが、人権(自由と平等)が侵害されつつあると米国民が感じれば、「自由と平等」を守るための軍事行動を喜んで容認するであろう。


金正恩氏は、たぶんこの件における判断を誤っている。


韓国は形式上日米の同盟国ではあるが、文政権による「GSOMIA」問題などの愚行の数々や従北・媚中の姿勢で、「あちら側の国」と米国から認識されているのは間違いない。


米国は、中韓北の「政府」を問題にしている


これらの3国では、要するに「共産主義独裁政権の1党独裁」によって、善良な国民が虐げられていると米国は考えている。


したがって、中北の共産主義独裁政権に虐げられたウイグルやチベット、さらには北朝鮮人民を始めとする国民は敵ではなく、むしろ救うべき対象である。


その点において、「革命」や「クーデター」によって国民自らが「巨悪」を排除するのが、米国の最も望むシナリオであるといえよう。


軍事クーデターの場合、新たな「軍事独裁政権」の誕生となる可能性も高いのだが、「共産主義1党独裁」よりも、「軍事独裁政権」の方がましだというのが米国の伝統的な考えである。これまでも、南米などで軍事独裁政権の後ろ盾になってきたことがその証だ。


実際、西側推計で8000万人を虐殺したとされる毛沢東政権、「収容所群島」(アレクサンドル・ソルジェニーツィン著)で有名なスターリン政権、「キリングフィールド」(1984年、英国)という映画の題材ともなったカンボジアのポル・ポト政権など、共産主義国家はファシズム国家に負けず劣らず残虐である。


韓国の場合は、少々事情が異なる。韓国は米国が北朝鮮や共産主義中国の魔の手から守った「自由主義陣営の国」である(あった)。


しかし文政権は、これほどひどいとは選挙の時には有権者が思っていなかったであろうが、あくまで国民の普通選挙によって選ばれている。


米国が、文政権に対して一応の敬意を払うのも、国民の選挙で選ばれたからである。しかし、2020年4月15日の国会議員を選ぶための総選挙で惨敗しながらも、文大統領が失脚しなかったとすれば、どうであろうか?


10月14日に曺国法相が電撃的に辞任を発表したが、同法相は就任から35日目で検察改革にも失敗した。これまで韓国の大統領は、職を失ってから悲惨な目にあってきたが、文氏も例外では無く、曺国法相の行いによって、マグマのようにたまっている検察の「恨(ハン)」を恐れ、夜も眠れないかもしれない。


したがって、死に物狂いで選挙に勝とうするだろうが、文政権のでたらめぶりが明らかなのに、選挙に勝利すれば、それは「国民の責任」とも言える。したがって、韓国民そのものが米国の敵になりかねないのだ。


これに関しては、日本も他人事ではない。オールドメディアに踊らされたとはいえ、2009年8月に「悪夢の民主党政権」を誕生させたのは、日本国民による選挙だ。幸いにして、自らの過ちに気がついた日本国民によって、3年で同党が政権の座を追われたのは不幸中の幸いだ。もしあのままであったら……と思うと背筋が凍りつく。


韓国民が、文在寅政権に同じような賢明な判断を下せるかどうかが来年の4月15日に明らかになる。もっとも、それに先行して軍事クーデターなどが起きればこの限りではないが……。


クーデターはまず北朝鮮で起こるのか?


金正恩委員長の叔父(金日成の息子)である金平一(キム・ピョンイル)駐チェコ大使が最近、31年間もの海外勤務の任を解かれ、北朝鮮に帰国した。


金正男氏の長男である金 漢率(キム・ハンソル)氏とともに、北朝鮮の革命組織・自由朝鮮が担ぎ上げようとしていた(本人は断ったとされる)人物である。


「自由朝鮮」の力は侮れない。また、ハンソル氏と自由朝鮮との関係も色々取りざたされているし、現在同氏は米国・FBIの保護下にあるとされる。


金正恩氏の真意はわからないが、「勝手に決めた年末までの交渉期限」を米国が無視すれば、振り上げた拳をおろせなくなって、米国の軍事行動を誘発する動きに出るかもしれない。


しかし、それ以上に可能性が高いのが、金一族の暴挙によって「心中」させられるのを望まない軍部のクーデターだ。特権階級である軍幹部は「失うには大きすぎる」ものを沢山もっているのである。


香港騒乱は広東省まで広がっている


区議会選挙での圧勝や、米国での相次ぐ人権法案の成立・可決によって民主派が勢いづいている中で、習近平政権は対応に苦慮している。その中で、共産主義中国に忖度する日本のオールドメディアは別にして、世界中のメディアが広東省における暴動を頻繁に報じるようになっている。


もちろん、中国における暴動はこれまでも年間10万件ほどあったと推計されるが、やはり「情報統制社会」である大陸中国においても、口コミなどによって情報は伝わるものである。


香港から勇気をもらった大陸の人民が、より強く自らの権利を主張しはじめたと見て間違いないであろう。


また、香港騒乱をきっかけに、世界中のメディアが共産主義中国における人権侵害に注目するようになり、頻繁にニュースに取り上げられるようになったことも影響している。


共産主義中国に忖度し、ガラパゴス的報道を続ける日本のオールドメディアのニュースがたれ流されている日本で、他人事のようなムードが続いているのは悲しいことだ。良識ある日本人は、オールドメディが流すフェイク・ニュースなど無視して、真実を見つめるべきであろう。


「グローバル・スタンダード」で見れば、習近平政権の運命は風前の灯であり、「革命」や「クーデタ」もかなり現実的な可能性として浮上している。


その中で、安倍政権がいまだに習近平氏を国賓で呼ぼうとしているのは言語道断であることは、11月27日の記事「習近平を『国賓』で呼ぶのは日本の国益に反すると断言できる理由」で述べたとおりである。


そもそも、厄介な共産主義中国という隣国の肥大化のきっかけをつくったのは、米国の頭ごしに「日中国交正常化」を行った田中角栄氏の「負の功績」である。しかも、角栄氏の勝手な行動に激怒した米国が、ロッキード事件を仕組んで政治生命を断ったとも噂される。


筆者はこれまでの安倍外交は、明治以来の首相の中で最高の結果を生んだと賛美していたが、この「この習近平氏来日」ひとつで、これまでの功績がすべて水泡に帰するかもしれない。


安倍首相には冷静かつ理性的な判断を望みたい。


海上保安庁では日本海は守れない


また、改憲論議に関しても、もしかしたら今は力をためているのかもしれないが、迫力不足なのは否めない。


12月12日公開の「日本は侵略されて初めて『憲法改正』を行うつもりなのか…?」で述べた様に、日本が侵略を受けてから泥縄式に憲法改正(そうなったら国会が正常に機能するかわからないが……)するなどということがあってはならない。


限られた予算と人員で、懸命に北朝鮮船を取り締まる海上保安庁には頭が下がるが、焼け石に水だ。


中韓北のいずれか、または全部が崩壊した場合、今のままでは、日本の安全保障は風前の灯といえる。


5月29日の記事「世界経済低迷の最大原因・中国が退場すればデフレが終わる」や、7月24日の記事「対韓輸出規制でわかった、『ニッポンの製造業』が世界最強であるワケ」で述べた様に、中韓いずれの国の混乱も日本の「経済」には、それほど大きな影響を与えないと思うが、安全保障は別問題である。


特定の野党の妨害工作にまけずに、「日本海防衛」を固めることに注力すべきである。


目に見えない脅威にも備えよ


日本が直面しているのは「目に見える脅威」だけではない。


ニュージーランドの現職国会議員(中国出身)が中国のスパイ容疑で、2017年に情報機関の捜査を受けている。この議員が中国軍の教育機関(洛陽外国語学院)に通っていた経歴を隠蔽していたことが捜査の始まりだ。洛陽外国語学院は、中国軍唯一の外国語大で、いわゆるスパイの養成を行う学校である。


また、同じ年には、オーストラリアの2大政党が、中国共産党とつながりをもつ富豪2人から長期にわたり、巨額の献金を受け取っていたことが明らかになっている。


さらに、今年の11月24日には、高級車ディーラーの男性に100万オーストラリア・ドル(約7400万円)を支払い、「メルボルンの選挙区から連邦議会選に立候補させようとした」という中国の工作疑惑をオーストラリア・大手メディが報じている。この男性は、2018年末に、スパイになるよう打診されたと明かし、今年3月にモーテルの部屋で死亡しているのが見つかっている。


共産主義中国は、自国から遠く離れた国々でも国会議員に対して、活発な工作活動を行っているのだ。


隣国であり、領土問題を抱えている世界第3位の経済大国である日本の国会議員に対する工作活動を北朝鮮や韓国も含めた国々が当然行っていると考えるのは、極めて自然だと思う。
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